2025年5月下旬、東アジアの旅行業界を揺るがす異例の事態が明らかになりました。なんと、「2025年7月に日本で大災害が起こる」という“噂”をきっかけに、日本行きの航空予約が急減しているのです。
特に香港・台湾・韓国など、日本への観光客が多いエリアでの落ち込みが目立っており、予約率の大幅な低下が報じられています。
正直、日本に住む私としては、「まさかここまで影響力があるとは…」と驚きを隠せません。日本発の航空便に関してはこうした動きは見られず、逆にインバウンド観光客が怪談話で右往左往している現状に、少し戸惑いすら覚えます。
本記事では、この噂の発端から旅行業界への影響、そして科学的な見解までを整理してご紹介します。
航空予約が前年比50%減、7月はなんと83%減の衝撃
イギリスの有力紙『ガーディアン』が2025年5月26日に報じたところによれば、旅行分析会社「フォワードキーズ(ForwardKeys)」の調査で以下のようなデータが明らかになりました。
- 香港発日本行き航空便の予約数:前年比50%減
- 特に6月末~7月上旬にかけての予約数:前年比83%減
これはただ事ではありません。
7月の日本旅行といえば、夏休み、花火大会、夏祭り、富士山登山など、訪日外国人にとっても非常に人気のある時期。その最盛期に向けての予約が大きく落ち込んでいるというのは、旅行業界にとって大打撃です。
「2025年7月に大災害」説はどこから来たのか?
この“怪談”の発端となったのは、日本の漫画家・たつき諒氏による作品『私が見た未来』。
1999年に出版されたこの漫画は、作者が見たという「予知夢」に基づいて描かれた内容であり、後に2011年の東日本大震災や2020年のコロナ禍を“的中”させたとしてネット上で話題になりました。
そして、この作品の中には、
「2025年7月に日本で大災害が起きる」
という記述があったため、再び注目が集まっているのです。
特にこの予言的な内容はSNSやYouTubeなどで爆発的に拡散され、
- YouTubeで「たつき諒×予言」関連動画は1400本以上
- 総再生回数は1億回超
- 漫画は2021年の再販後、100万部近くを売り上げるベストセラー
と、漫画の域を超えて“社会現象”となっています。
実際に旅行キャンセルが相次いでいる
香港の格安航空会社「グレーター・ベイ航空」は、「桜シーズンやイースターなど繁忙期にもかかわらず、日本行き需要が例年よりも明らかに低調だった」と説明。
また、香港の大手旅行会社の関係者も、「あの漫画の影響で、旅行心理にブレーキがかかったことは否定できない」とコメントしており、4~5月の予約件数は前年の半分以下になったとも報じられています。
台湾や韓国でも似たような傾向が見られ、オンライン掲示板や旅行系SNSでは、
- 「日本旅行は2025年7月以降にしようかな」
- 「今はちょっと怖いから他の国に行くことにした」
- 「災害が来るっていうなら、安全な国に行くよ」
といった投稿が見られます。
噂の信ぴょう性は? 専門家の見解は冷静そのもの
このような“予言騒動”に対して、地震学や災害対策の専門家は一貫して冷静な立場をとっています。
- 日本は「環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイア)」に位置し、地震が多い地域であることは事実
- しかし、地震の発生日時や場所をピンポイントで予測するのは科学的に不可能
- いかなる科学的根拠もなく、不安を煽るだけの情報には注意が必要
宮城県の村井嘉浩知事は次のように訴えています。
「事実に基づかない噂や怪談によって、地域観光や経済が悪影響を受けている。こうした話に振り回されず、冷静な判断をお願いしたい」
たつき諒氏自身も「冷静な対応を」
本人であるたつき諒氏も、最近の毎日新聞のインタビューでこのように語っています。
「こうした話題が出るのは、防災意識が高まっている証拠であり、前向きに捉えている」
その一方で、
「あくまで“夢”に過ぎないという前提を忘れず、過剰に反応しないこと、そして専門家の意見に耳を傾けて冷静に行動することが大事」
と注意喚起しています。
日本発では聞かない動き──なぜ海外ではこれほど影響が?
不思議なことに、このような影響はあくまで“訪日旅行”に限定されており、日本国内や日本発の海外旅行に同様のキャンセルや懸念は見られません。
実際、日本国内では「2025年に災害が起きる」という噂がSNSで話題になったことはあるものの、それで人々が実際に旅行を控えたり、経済活動を止めたりするような行動にはつながっていません。
逆に、今回の報道を見て初めて「えっ?そんな話が海外で広まってるの?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
まとめ:噂に惑わされず、正しい情報で行動を
今回の一連の動きは、インターネットやSNS時代における情報拡散の力と危うさを象徴する出来事と言えるでしょう。
- 噂の発端は一冊の漫画
- SNSや動画コンテンツを通じて拡大
- 実際の旅行需要にまで影響を及ぼす
- 科学的根拠は皆無だが、多くの人が不安に
もちろん、備えあれば憂いなし。災害に備える意識を持つことは非常に大切です。
しかしその一方で、不確かな情報に振り回され、経済や日常の活動が過度に制限されてしまっては本末転倒。正確な情報を基に、冷静に行動することこそが、今本当に必要な防災意識なのかもしれませんね。